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法律相談Q&A

クレーム対応中の動画撮影

Q 従業員がお客様からクレームを受ける際に,従業員を撮影する事例が発生しています。この行為に対して,撮影を拒否することはできますでしょうか。

A 以下のとおりとなります。

1 結論

  肖像権侵害を理由として,撮影を拒否できる可能性が十分にあります。

2 根拠

(1) 肖像権について

 肖像権とは,「その承諾なしに,みだりにその容ぼう,姿態を撮影されない自由」(名古屋地判平成16年7月16日参照)を指します。そのため,無断での写真撮影は,肖像権侵害となり,不法行為(民法709条)を構成可能性があります。

 上記肖像権侵害の有無は,撮影の目的の相当性,必要性,方法の相当性等を考慮して総合的に判断されます(前掲名古屋地裁平成16年7月16日)。また,他の裁判例(東京地判平成17年9月27日)では,「原告(無断で写真を撮影された者)の着用していた服の胸部には上記のような「SEX」の文字がデザインされていた」ことを指摘して,「一般人であれば,自己がかかる写真を撮影されることを知れば心理的な負担を覚え,このような写真を撮影されたり,これをウェブサイトに掲載されることを望まない」との評価のうえ,肖像権侵害を認めているものもあり,「一般人であれば,そのような写真を撮影されることに心理的負担があるか」という点が「相当性」の判断において重要な要素となります。

(2) 本件に関する検討

ア 本件で,撮影の目的について,お客様は,「~~~といったクレームが発生しており,その対応についての履歴を保全するために撮影をしている。」といった主張をすることが想定されます。

 しかしながら,そのような対応履歴の保全という趣旨であれば,録音+従業員の名刺交付との方法などで代替が可能であり,当該目的との関係で,直ちに動画撮影が必要であるとは言い難いです。

イ また,クレームに対応するという弱い立場にある姿を撮影されるということは,(例えば,人前で怒ることがパワハラになりやすい。)通常人に見られたくないものであり,強い心理的負担を与えかねません。

(3) 小括

 以上からすると,相談事例のように,お客様がクレーム対応をする従業員の動画撮影することは,肖像権侵害に該当する可能性が十分にあります。

3 対応策

(1) 以上のため,対応としては,以下が考えられます。

① 撮影を止めるように伝えます。

 ※ この際,例えば,「対応の履歴を保全する趣旨であれば,当方で,録音してそれを提出致します。」と伝えるなども検討します。

② それに応じない場合には,肖像権侵害による不法行為にあたることを伝えます。

 ※ ただし,謝罪を迫られている立場としてどこまで強い発言ができるかという問題,伝え方によってはそのこと自体でクレームが激化する可能性があるという問題は存します。

⑵ なお,強制的に,強制的にカメラを取り上げるなどの措置については,往々にして,過度な実力を行使するおそれがあり,そのような場合には,民事責任のみならず,刑事責任をも負う可能性があるため,注意が必要です。また,上記のとおり具体的な事案によってはそもそも撮影自体が肖像権侵害(違法)ではなく適法という場合もありえ,その場合には,実力行使の違法性が阻却されないということになるため,結論として,実力行使は,控える方が無難です。

執筆者 弁護士:谷亮平
弁護士登録後、建築・設計・土木・不動産分野を専門的に取り扱う法律事務所に入所。クライアント企業である鉄道会社、ゼネコン、ハウスメーカー、工務店、設計事務所からの法律相談、紛争事件を多数手がける。昨今は、企業関連法務、マンション管理、システム開発の分野にも注力している。