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法律相談Q&A

建設業法上どのような書面を保管しておく必要がありますか。

Q 建設業法上どのような書面を保存する必要がありますか。

A 以下のとおりです。

⑴ 「建設業者は,国土交通省令で定めるところにより,その営業所ごとに,・・・(中略)・・・,当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。」(建設業法40条の3)。

⑵ 同法40条の3の「帳簿」に関しては,同法施行規則26条1項において,必要記載事項が規定されています(後記【参考条文】参照)。また,当該「帳簿」には,請負契約書の添付が要求される(同規則26条2項1号)。この「帳簿」及び「帳簿」に添付された書類の保存期間は,建設工事の目的物の引渡しから5年間(住宅を新築する建設工事に係るものにあっては10年間)です(同規則28条1項)。

⑶ 同法40条の3の「その営業に関する図書で国土交通省令で定めるもの」については,同法施行規則26条5項において,①完成図(1号),②発注者との打合せ記録(2号),③施工体系図(3号)と定められています。なお,③施工体系図の保存が必要となるのは,作成建設業者[1](同法施行規則14条の2第1項1号)のみです。

①完成図,②発注者との打合せ記録の具体例としては,以下の書面,図面等が挙げられます(建設工事における書面・図面の電子化/保存ガイドライン 第2版 抜粋)。

(①完成図の具体例)

区分具体例
共通図面リスト
意匠設計概要書,特記仕様書,室内仕上表,附近見取図,配置図,平面図,断面図,立面図,矩計図,平面詳細図,断面詳細図,階段詳細図,屋外工事詳細図
構造構造概要書,特記仕様書(構造),杭伏図,基礎伏図,床伏図,屋根伏図,塔屋伏図,軸組図,基礎リスト,柱リスト,大梁リスト,小梁リスト,スラブリスト,階段リスト,壁リスト,鉄筋詳細図,鉄骨伏図,鉄骨軸組図,鉄骨詳細図
設備    設備概要図,特記仕様書(設備),電気設備設計図,給排水衛生設備設計図,空気調和設備設計図,昇降機設備設計図,その他設備設計図

(②発注者との打合せ記録の具体例)

具体例
質疑応答書,指示書・連絡書(発注者・設計・諸官庁),総合定例打合議事録,社外打合せ記録(諸官庁)

⑷ なお,①完成図,②発注者との打合せ記録,③施工体制図の保存期間は,建設工事の目的物を引渡したときから10年です(同施行規則28条2項)。


[1] 特定建設業者が発注者から直接建設工事を請け負った場合において,当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額が政令で定める金額以上(4000万円以上,ただし,発注者から直接請け負った建設工事が建築一式の場合には,6000万円以上)となり,施工体制台帳を作成する建設業者をさす(建設業法24条の7第1項,同施行令7条の4)。

◆建設業法

(帳簿の備付け等)

第四十条の三  建設業者は,国土交通省令で定めるところにより,その営業所ごとに,その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え,かつ,当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。

第五十五条  次の各号のいずれかに該当する者は,十万円以下の過料に処する。

一~四 (略)

五  第四十条の三の規定に違反して,帳簿を備えず,帳簿に記載せず,若しくは帳簿に虚偽の記載をし,又は帳簿若しくは図書を保存しなかつた者

◆建設業法施行規則

(帳簿の記載事項等)

第二十六条  法第四十条の三 の国土交通省令で定める事項は,次のとおりとする。

 営業所の代表者の氏名及びその者が当該営業所の代表者となつた年月日

 注文者と締結した建設工事の請負契約に関する次に掲げる事項

 請け負つた建設工事の名称及び工事現場の所在地

 イの建設工事について注文者と請負契約を締結した年月日,当該注文者(その法定代理人を含む。)の商号,名称又は氏名及び住所並びに当該注文者が建設業者であるときは,その者の許可番号

 イの建設工事の完成を確認するための検査が完了した年月日及び当該建設工事の目的物の引渡しをした年月日

 発注者(宅地建物取引業法 (昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第三号 に規定する宅地建物取引業者を除く。以下この号及び第二十八条において同じ。)と締結した住宅を新築する建設工事の請負契約に関する次に掲げる事項

 当該住宅の床面積

 当該住宅が特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律施行令 (平成十九年政令第三百九十五号)第三条第一項 の建設新築住宅であるときは,同項 の書面に記載された二以上の建設業者それぞれの建設瑕疵負担割合(同項 に規定する建設瑕疵負担割合をいう。以下この号において同じ。)の合計に対する当該建設業者の建設瑕疵負担割合の割合

 当該住宅について,住宅瑕疵担保責任保険法 人(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律 (平成十九年法律第六十六号)第十七条第一項 に規定する住宅瑕疵担保責任保険法 人をいう。)と住宅建設瑕疵担保責任保険契約(同法第二条第五項 に規定する住宅建設瑕疵担保責任保険契約をいう。)を締結し,保険証券又はこれに代わるべき書面を発注者に交付しているときは,当該住宅瑕疵担保責任保険法 人の名称

 下請負人と締結した建設工事の下請契約に関する次に掲げる事項

 下請負人に請け負わせた建設工事の名称及び工事現場の所在地

 イの建設工事について下請負人と下請契約を締結した年月日,当該下請負人(その法定代理人を含む。)の商号又は名称及び住所並びに当該下請負人が建設業者であるときは,その者の許可番号

 イの建設工事の完成を確認するための検査を完了した年月日及び当該建設工事の目的物の引渡しを受けた年月日

 ロの下請契約が法第二十四条の五第一項 に規定する下請契約であるときは,当該下請契約に関する次に掲げる事項

(1) 支払つた下請代金の額,支払つた年月日及び支払手段

(2) 下請代金の全部又は一部の支払につき手形を交付したときは,その手形の金額,手形を交付した年月日及び手形の満期

(3) 下請代金の一部を支払つたときは,その後の下請代金の残額

(4) 遅延利息を支払つたときは,その遅延利息の額及び遅延利息を支払つた年月日

 法第四十条の三 に規定する帳簿には,次に掲げる書類を添付しなければならない。

 法第十九条第一項 及び第二項 の規定による書面又はその写し

 前項第四号ロの下請契約が法第二十四条の五第一項 に規定する下請契約であるときは,当該下請契約に関する同号ニ(1)に掲げる事項を証する書面又はその写し

 前項第二号イの建設工事について施工体制台帳を作成しなければならないときは,当該施工体制台帳のうち次に掲げる事項が記載された部分(第十四条の五第一項の規定により次に掲げる事項の記載が省略されているときは,当該事項が記載された同項の書類を含む。)

 監理技術者の氏名及びその有する監理技術者資格並びに第十四条の二第一項第二号ヘに規定する者を置くときは,その者の氏名,その者が管理をつかさどる建設工事の内容及びその有する主任技術者資格

 当該建設工事の下請負人の商号又は名称及び当該下請負人が建設業者であるときは,その者の許可番号

 ロの下請負人が請け負つた建設工事の内容及び工期

 ロの下請負人が置いた主任技術者の氏名及びその有する主任技術者資格並びにロの下請負人が第十四条の二第一項第四号ヘに規定する者を置くときは,その者の氏名,その者が管理をつかさどる建設工事の内容及びその有する主任技術者資格

 第十四条の七に規定する時までの間は,前項第三号に掲げる書類を法第四十条の三 に規定する帳簿に添付することを要しない。

 第二項の規定により添付された書類に第一項各号に掲げる事項が記載されているときは,同項の規定にかかわらず,法第四十条の三 に規定する帳簿の当該事項を記載すべき箇所と当該書類との関係を明らかにして,当該事項の記載を省略することができる。

 法第四十条の三 の国土交通省令で定める図書は,発注者から直接建設工事を請け負つた建設業者(作成建設業者を除く。)にあつては第一号及び第二号に掲げるもの又はその写し,作成建設業者にあつては第一号から第三号までに掲げるもの又はその写しとする。

 建設工事の施工上の必要に応じて作成し,又は発注者から受領した完成図(建設工事の目的物の完成時の状況を表した図をいう。)

 建設工事の施工上の必要に応じて作成した工事内容に関する発注者との打合せ記録(請負契約の当事者が相互に交付したものに限る。)

 施工体系図

 第一項各号に掲げる事項が電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され,必要に応じ当該営業所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは,当該記録をもつて法第四十条の三 に規定する帳簿への記載に代えることができる。

 法第十九条第三項 に規定する措置が講じられた場合にあつては,契約事項等が電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され,必要に応じ当該営業所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは,当該記録をもつて第二項第一号に規定する添付書類に代えることができる。

 第五項各号に掲げる図書が電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され,必要に応じ当該営業所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは,当該記録をもつて同項各号の図書に代えることができる。

(帳簿及び図書の保存期間)

第二十八条  法第四十条の三 に規定する帳簿(第二十六条第六項の規定による記録が行われた同項のファイル又は磁気ディスクを含む。)及び第二十六条第二項の規定により添付された書類の保存期間は,請け負つた建設工事ごとに,当該建設工事の目的物の引渡しをしたとき(当該建設工事について注文者と締結した請負契約に基づく債権債務が消滅した場合にあつては,当該債権債務の消滅したとき)から五年間(発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものにあつては,十年間)とする。

2  第二十六条第五項に規定する図書(同条第八項の規定による記録が行われた同項のファイル又は磁気ディスクを含む。)の保存期間は,請け負つた建設工事ごとに,当該建設工事の目的物の引渡しをしたときから十年間とする。

執筆者 弁護士:谷亮平
弁護士登録後、建築・設計・土木・不動産分野を専門的に取り扱う法律事務所に入所。クライアント企業である鉄道会社、ゼネコン、ハウスメーカー、工務店、設計事務所からの法律相談、紛争事件を多数手がける。昨今は、企業関連法務、マンション管理、システム開発の分野にも注力している。