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法律相談Q&A

モデルハウスで不動産の営業をすることは宅建業法上問題ありませんか。

Q 当社は,モデルハウスで不動産の営業をすることを検討していますが,宅建業法上気を付けなければならないことはありますか。

A 以下のとおりです。

1 標識の設置義務(宅建業法50条1項)

 「宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合」であって,「これらの催しを実施する場所」には,所定の標識[1]を設置しなければなりません(宅建業法50条1項,同法施行規則19条5号)。

 これは,同場所における営業内容にかかわらず,必要となるので,案内や広告のみの場合でも,当該標識は必要です。

 なお,後述2⑵のとおり,売買契約締結の申込み等を受けることとする場合には,専任の宅地建物取引士の設置やその届出が必要となりますが,裏を返せば,そのような売買契約締結の申込み等を受けることがなく,案内や広告にとどまる場合には,それらの規制はかかりません。

2 売買契約締結の申込み等を受けることとする場合に関する規制

 さらに,「本件モデルハウス」において,案内・広告のみならず,売買契約締結の申込みを受けることとする場合には,以下の宅建業法上の規制が問題となります。

⑴ 専任の宅地建物取引士の設置義務(宅建業法31条の3)

 宅地建物取引業者が,「宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合」において,その実施場所で,宅地若しくは建物の売買若しくは交換の契約(予約を含む。)若しくは宅地若しくは建物の売買,交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の契約を締結し,又はこれらの契約の申込みを受ける場合には,当該案内所に専任の宅地建物取引士を一人置く必要があります(宅建業法31条の3第1項,同法施行規則15条の5の2第4号,同法施行規則15条の5の3)。

 したがって,「本件モデルハウス」において,案内・広告のみならず,買い受けの申込み等を受けることとする場合にあっては,専任の宅地建物取引士の設置が必要となります[2]

⑵ 届出義務(宅建業法50条2項)

 上記⑴により,宅地建物取引士を置くべき場所については,業務開始の10日前までに,様式12号による届出書を提出して,免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事及びその所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければなりません(宅建業法50条2項,同法施行規則19条3項)。

 したがって,「本件モデルハウス」において,買い受けの申込み等を受けることとする場合には,併せて上記届出が必要となります。

                                以上


[1] 様式第10号(宅建業法50条1項,同法施行規則19条2項2号)です。

[2] なお,「専任」とは,当該事務所等(本件における『本件モデルハウス』)に常勤して専ら宅地建物取引業務に従事する状態にあることを要し,常勤するとは,宅地建物取引士が当該事務所等に常時勤務すること,若しくは常時勤務することができる状態にあることをいうものとされ,常時勤務とは,宅地建物取引士と宅建業者との間に雇用契約等の継続的な関係があり,当該事務所等の業務に従事する,若しくは従事することができる勤務形態であることを要するものとされます(岡本正治・宇仁美咲著『逐条解説宅地建物取引業法』154~155頁参照)。

執筆者 弁護士:谷亮平
弁護士登録後、建築・設計・土木・不動産分野を専門的に取り扱う法律事務所に入所。クライアント企業である鉄道会社、ゼネコン、ハウスメーカー、工務店、設計事務所からの法律相談、紛争事件を多数手がける。昨今は、企業関連法務、マンション管理、システム開発の分野にも注力している。